手のひらサイズの小型ドローンであるマイクロドローン(ミニドローン、トイドローンともいう)にフルHDの高解像カメラを搭載して撮影された映像が、これまで見たことのないあたかも自身が小さくなって空中を自在に散歩しているかのような新しい映像体験をもたらしてくれています。どうやって撮影されているのか、クリエイティブ活動に取り入れるためにはどのようにすればいいのかについて注目しました。
Micro Drone HD filming with JK group "Onnanocos"
オンナノコズ:http://onnanocos.jp/
出演:村上なずな、上野ニーナ、YULi、加賀理聖、和田心乃華、内山愛望、平田雅結
撮影協力:菊華高等学校
モデルエージェンシー:セントラルジャパン
撮影:CinemaRay
近畿大学 東大阪キャンパス「ACADEMIC THEATER」内をマイクロドローンで撮影
曲:Free Your Imagination! / KINDAI GIRLS 作詞:つんく 作曲:つんく
監督:山本ヨシヒコ
撮影:増田勝彦(株式会社シネマレイ)
朝日放送で毎週金曜日20:54~21:00に放送中 (番組編成の都合によっては、放送休止・放送時間変更となる場合があります。)
平均年齢17才ヴォーカル&ダンスグループJ☆Dee'Z(ジェイディーズ)
日本工学院CMソング「未来飛行」Music Videoを公開!今回のMVでは、史上初となる全編小型マイクロドローンを使用して撮影。
映像コンテンツ開発や関連機器販売などを手掛ける(株)シネマレイが2018年に発表したこのマイクロドローンは、プロペラガードを備えた縦横110mm程度の小さなFPV(First Person View)のドローン。
普段入り込めないような場所でも遠隔操作でフルHD画質の動画を制作でき、開発が発表されると世界中を驚かせすぐさま話題となった撮影機だ。そんなドローンが今回初めてコラボレーションしたダンスは、ドローンが通ることまで想定された振付で、J☆Dee'Zのメンバーの足の間や顔の真横も通る迫力満点の映像に仕上がっている。
新しい映像体験を感じさせてくれるマイクロドローン。今後クリエイティブ界隈でもより多くの人が取り入れられていくことでしょうが、自身のクリエイティブ活動に取り入れるにあたって、何が必要になるのかなどについてみていきましょう。
ドローンは規制が厳しいのでは?マイクロドローンなら大丈夫?
ドローンといえば、日本国内では2015年12月施行された改正航空法によって、自由に飛ばすことができない規制が厳しいイメージがあります。しかしながら、この規制は、本体の重量とバッテリーの重量の合計(バッテリー以外の取外し可能な付属品を除く)が200g以上である場合に「無人航空機」に分類されるために該当します。200g未満のドローンであれば「模型航空機」に分類され、規制の対象とはならないのです。また、マイクロドローンは室内で利用することができるほど小さいので、室内利用であれば、そもそも航空法の規制対象外ということになります。
200g以上ある「無人航空機」に分類されるドローンであれば、飛行禁止場所として、
飛行の禁止空域
- 地表又は水面から150m以上の高さの空域
- 空港周辺の空域
- 人口集中地区の上空
の規制があり、加えて、飛行させる場所に関わらず「無人航空機」を飛行させる場合に遵守しなければならない次の6つのルールが存在します。
飛行の方法
- 日中(日出から日没まで)に飛行させること
- 目視(直接肉眼による)範囲内で無人航空機とその周囲を常時監視して飛行させること
- 第三者又は第三者の建物、第三者の車両などの物件との間に距離(30m)を保って飛行させること
- 祭礼、縁日など多数の人が集まる催し場所の上空で飛行させないこと
- 爆発物など危険物を輸送しないこと
- 無人航空機から物を投下しないこと
さらには、地方公共団体などが定める条例(自治体によっては重要文化財や都市公園等での飛行を禁止している)等も遵守しなければならないといった第3の規制もあります。
これらのルールに違反した飛ばし方を行えば、当然、違法となり、50万円以下の罰金が課されることがあります。一方、200g未満のドローンは「模型航空機」なので、人口集中地区であっても飛ばすことができ(空港周辺と一定の高度以上、その他個別に地方公共団体などが定める条例ついては模型航空機であっても規制対象)、人やモノから30m以上距離をあけて飛ばさなければらないというルールも対象外なので、人の股下や顔の真横を通るような迫力満点な映像を撮ることもできます。
マイクロドローンは最も小さなものになれば、本体重量はわずか30g程度で、プロペラにはガードもついていて、人にぶつかっても怪我しないように安全面にも配慮されています。しかしながら、小さくなればなるほど、エアコンの風が当たっただけでもバランスを崩してしまうほど不安定なため、機体を墜落させないためにはシビアな操作技術が求められます。
FPV飛行には免許が必要
マイクロドローンは、単純に機体を飛ばすだけなら、特別な免許や資格、許可も必要ありません。誰でもいつでも気軽に飛ばすことができます。そして、目視(直接肉眼による)範囲内で飛行させなければならないというルールからも対象外なので、小さなカメラと映像送信装置をドローンに搭載すれば、無線電波で映像を転送して、受信機となるゴーグル(ヘッドセット)を身に着けた操縦者がその映像をリアルタイムに見ながらドローン視点で操縦して飛行させることができます。この飛行操作方法を、FPV(First Person View)といいます。「一人称視点」という意味です。
このFPV飛行がいろいろな可能性を秘めており、とても魅力的で、マイクロドローンにはまってしまう人が世界的に続出しているようです。クリエイティブな映像を撮ることだけに限らず、大迫力のスピード感を楽しめるドローンレースといった娯楽から、少々の風でも安定して飛行できる小型ドローンは「今まさに現場で何が起きているか」をいち早く確認できる手段として災害・事故現場でも活躍することができます。
なお、日本国内では、このFPV飛行を行うためには、免許が必要になります。なぜなら、ドローンからのリアルタイムでスムーズな画像転送を行うには、有資格者でなければ利用できない電波帯域(5Ghz帯)を利用するためです。5Ghzの電波帯域であれば、スムーズな画像転送が可能になり、ドローン視点の映像をリアルタイムに見ながら操縦して飛行させることができます。
アメリカや中国などは5Ghz帯は合法的に扱えるので特別な資格は必要ありませんが、日本国内では、2016年8月31日に電波法が改正され、5GHzの電波帯域をドローンで扱うためには、
- ホビー・レジャー用途であればアマチュア無線4級以上をもっていること
- 業務用途であれば第三級陸上特殊無線技士をもっていること
の資格を有している必要があります。業務でドローンを扱うことを考えている方は、アマチュア無線4級と第三級陸上特殊無線技士の両方を取得しておくと良いでしょう。
これら無線技士の免許を取得したら、総務省の無線局開局手続きをおこなうことで、日本国内で5GHzの電波帯域が扱えるようになります。資格取得から無線局開局まであわせると最低でも2ヶ月くらいはかかると考えておきましょう。
アマチュア無線4級
アマチュア無線4級は、国家試験ですが、それほど難しい資格ではありません。
試験は、法規と無線工学の問題が4択形式で出題され、それぞれ7割程度の正答率で合格となります。試験問題は、過去出題された問題が順番を変えて出題されているケースがほとんどなので、過去問を暗記していれば大丈夫です。試験を受ける方法は、次の2通りがあります。
- 講習会を受講し、講習会の中で実施される試験に合格する
- 国家試験を直接受けて合格する
講習会を受ける場合は、一般財団法人日本アマチュア無線振興協会が提供する2日間(授業時間10時間)の講習に参加し、最後に簡単な試験を受けます。講習会の費用は約23,000円ほどで、直接受験だと約5,000円ほど費用がいります。
講習会は、ご自身の地域名に「地域名+アマチュア無線4級+講習会」のように検索されると見つけることができると思われます。最近では、マイクロドローンが人気であることから、マイクロドローン体験講座とセットになったアマチュア無線4級養成の講習会もあります。
第三級陸上特殊無線技士
趣味や遊びでドローンを操縦する場合はこの資格を取得する必要はありませんが、「電波法の改正によって新たに設定されたドローン専用の周波数帯を使用し本格的に飛行させたい」「よりきれいな映像を空撮したい」「ドローンを業務利用したい」「よりドローンについての知識を深めたい」というような場合は、第三級陸上特殊無線技士の資格を持っていた方が良いでしょう。合格率も80%ほどなので、それほどハードルの高い資格ではありません。
試験は、法規と無線工学の問題が3択形式または◯×形式で出題され、それぞれ7割程度の正答率で合格となります。出題内容は、アマチュア無線4級とほとんど同様で、過去問を暗記していれば大丈夫でしょう。試験を受ける方法も掛かる費用もアマチュア無線4級と同様ですので、「地域名+第三級陸上特殊無線技士+講習会」のように検索されると近くで開催されている講習会を見つけることができると思われます。マイクロドローン体験講座とセットになった第三級陸上特殊無線技士養成課程も多くあります。
無線局開局手続き
資格を取得できたら、次は総務省への無線局の申請になります。無線局開局の申請手続きには「紙での申請」と「オンラインでの申請」の2種類があります。
この申請、紙にしてもオンラインにしても、送信機系統図などの書類が必要となったり、なかなか複雑で手間も時間もかかるので、代理申請を利用することを検討されるのもひとつです。2万円以下で代理申請を受けているところがあるので、検索して、信頼できそうなところに依頼されると良いでしょう。
なお、ご自身で申請される場合は、オンライン申請であれば、総務省の電波利用 電子申請・届出システム Lite(以下、電子申請システム)から申請します。ただし、残念なことに、この電子申請システム、2018年現在は、お国のシステムにありがちなPCのOSがWindow限定でブラウザがIEかEdgeでないと利用することができない仕様です。クリエイティブ界隈の方には、MacのPCしかお持ちでない方も多いため、せっかくご自身で申請しようと思ったのに。。。なんてことにご注意ください。オンライン申請の手順は、
にて詳しく解説されていますので、ご参考にしてください。ご自身で申請される場合であっても、保証料と開局費用あわせて約8,000〜10,000円ほどの費用がかかります。
どんなドローンをどこで選ぶといいか
マイクロドローンといえば、「Tiny Whoop(タイニー・フープ)」といわれるぐらいに、アメリカのドローンレーサーグループから生まれたマイクロドローンが世界的に有名です。
しかしながら、機体だけを購入すればいいのではなく、他にもカメラやゴーグル(ヘッドセット)など揃えなければならない機材があります。初心者の方は、あらかじめ、機体・プロポ(コントローラー)・カメラ・ゴーグル(FVP用ヘッドセット)がセットになった入門用からはじめられるのがいいでしょう。
基本的には、日本仕様正規品として販売されていて、「アマチュア無線4級の免許と無線局開局手続きが必要」と説明されているドローンであれば、免許を受ける手続きを簡易にする技適を取得しているドローンですので、無線局の開局手続きにあたっても問題ありません。
将来的にドローンを業務へ活用することをお考えなのであれば、オンラインで買い揃えられるのではなく、最近のドローン人気によって(先のPV映像のマイクロドローンのカスタマイズなどを手がけられた兵庫にあるラジコンショップのep-modelsさんをはじめ)ドローン専門のラジコンショップも増えてきていますので、ご自身の用途や現在の操作技能にあったものをお近くのショップで選んでもらうと良いでしょう。技術的な課題がでてきたときにもカスタマイズなどの相談に乗ってもらえることは業務へ活用する上でも、必要不可欠になってきます。
操作技術を習得するにはどうすればいいか
ドローンの操作技術は、今後、幅広い分野で需要が見込まれています。少子化で自動車教習所の経営環境は厳しくなる一方、新規事業としてドローン教習をはじめるといった自動車教習所がでてきたりと、地方においても急速にドローンスクール事業を展開しているところが増えてきています。お近くのドローンスクールを探されると良いでしょう。
基本操作技術もない中で、一人で黙々と操作練習をしようとして壊してしまっては元も子もありません。ドローンスクールの講習であれば、最短3日ほどのカリキュラムで効率的に操作方法が学べます。もし操作をミスしても、インストラクターも常時プロポ(コントローラー)をもって待機してくれており、いざという場合には墜落しないようにしっかりとカバーしてくれるので、安心して操作技術の向上に取り組めます。先に紹介したような背景から、いまやドローンスクールは地方を含め数多く展開されていますので、まずはドローンスクールで基本操作技術を習得して、操作技術を日々磨いていくのが王道となるでしょう。
これらのドローンスクールは、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の無人航空機講習認定校に登録されており、ドローンスクールで講習を受けることで、JUDIAが認定する「操縦技能」と指導者になれる「安全運航管理者」の証明証を取得することができます。
また、ドローンを業務活用していく中で、空撮映像にこだわりたい案件がでてくれば、マイクロドローンではなく200g以上のドローンも必要となってくることでしょう。これらの証明証を取得されておくことで、飛行許可の必要な人口集中地区の上空に200g以上の「無人航空機」に分類されるドローンを飛行させることになった場合でも、国土交通省への許可申請(地方航空局長の許可を受けること)がスムーズにできるなどの利点があるようです。
JUIDAの無人航空機講習認定校に登録されているドローンスクールの講習費用は、約22〜23万円前後ほどです。
機体や機材を揃え、操作技術の習得やもろもろの資格取得費用もあわせると、新たにドローンを活用した業務を始めるには最低30数万〜の費用が必要になると考えられます。ドローンの今後の可能性は、クリエイティブに限らず、多方面にあるので、その分の価値は十二分に見込めることでしょう。クリエイティブ活動に取り入れるにあたっては、餅は餅屋ということで、マイクロドローンの機体や機材はプロに選定・カスタマイズの助力をしてもらいつつ、自身は操縦者としての技術を磨くということがクリエイティブな映像を撮るためには一番大事ということになりそうです。
今後もドローンを活用した新しい映像体験が次々でてくることが期待されます。弊社でも今後ぜひ活用を考えていきたい分野であると感じており、スタッフへの資格取得や操作技術への定着化に取り組んでいきたいと思います。